副作用はあるの!?更年期に知っておきたいホルモン補充療法(HRT)

顔がほてったり、急に大量の汗をかいたり……更年期になり、さまざまな不快症状に悩まれている女性は多いのではないでしょうか。更年期障害の治療には、ホルモン補充療法(HRT)が有名です。女性ホルモンを薬として投与する方法ですが、よく「副作用がある」といわれるために、治療を受けるか迷う方も少なくありません。
ホルモン補充療法(HRT)とは具体的にどのような方法で、どんな副作用がありえるのでしょう? ここでは、ホルモン補充療法(HRT)の疑問についてまとめてみました。
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ホルモン補充療法(HRT)って何?
更年期にあらわれるさまざまな不快症状、いわゆる更年期障害はエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌が、急激に減少するため起こります。それは加齢によって卵巣の機能が低下することが原因です。ホルモン補充療法(HRT)とは、減少した女性ホルモンを薬として外から補うことで、更年期のつらい症状を緩和する治療法です。1960年代後半のアメリカで生まれました。
ホルモン補充療法(HRT)には、エストロゲンとプロゲステロンというホルモン剤を用います。エストロゲンは女性ホルモンの代表的な存在ですね。エストロゲンを投与することで、不安定になった女性ホルモンのバランスを整えます。一方、プロゲステロンは黄体ホルモンと呼ばれ、エストロゲン剤の副作用、特に子宮内膜の増殖を予防する目的で使用されます。プロゲステロン単体で、更年期症状の治療に用いられることはありません。
エストロゲンは女性特有の病変には深い関わりがあるため、乳がんや子宮がんなどを治療中であったり重篤な既往症をもつ方によっては、ホルモン補充療法(HRT)は受けられない場合があります。
どんな効果があるの?
ホルモン補充療法(HRT)は、直接エストロゲンを補給する治療法であるがゆえに、更年期障害として起こるありとあらゆる症状の緩和に、大なり小なり有効に作用します。なかでもホットフラッシュ、つまりのぼせや顔のほてり、異常な発汗や動悸、手足や腰の冷えなどの症状の軽減によく効きます。
また、ホルモン補充療法(HRT)は閉経後に起こりやすい骨粗しょう症の予防に効果があり、長期間服薬していると実際に骨折の頻度も低下します。さらに血液中のコレステロール値を低下させ、善玉コレステロールを増やして動脈硬化症を防ぎます。
そして美容面ではエストロゲンの作用で、肌のハリやツヤが出るといった嬉しいおまけもあります。
どれくらい続ければいい?
ホルモン補充療法(HRT)は、個人差はあるものの、一般的には治療を始めて一週間もするとその効果が徐々に現れてきます。特に、ほてり、発汗、およびそれに基づく不眠は劇的に軽快するといわれています。治療にあたっては、通常二か月間(八週間)を一サイクルとして服薬しますが、再発することが少なくなく、この場合は繰り返し治療を行ないます。
ホルモン補充療法(HRT)で重要なことは、毎日きちんと薬を飲むことです。不快症状が治まったからといってすぐに薬を断ち切ってしまうと、リバウンドで余計につらい症状が出ることがあります。更年期はたいていの方は数年間で終わりますので、少なくともその期間は服薬を続ける方がより効果的といえるでしょう。
気になる副作用は?
どのような治療法でも心配になるのが副作用ですよね。ホルモン補充療法(HRT)で使用されるホルモン剤は内分泌系に直接関与する薬であるため、余計に不安になる方が多いかもしれません。過去には、乳がんの発がん性が高まる危険性があると、海外メディアで取り上げられたこともあります。では、実際のところはどうなのでしょうか?
子宮体がんのリスクは下がる傾向が
ホルモン補充療法(HRT)を受ける方にとって、不安の種になりがちなのはエストロゲンの影響を受けやすい、子宮がんや乳がんです。しかし、子宮体がんについていえば、かつてエストロゲン剤のみを使用していた場合と違い、現在のプロゲステロンを併用するホルモン補充療法(HRT)の場合はリスクがぐんと減り、子宮体がんの発生が約半分に減ることが証明されています。むしろホルモン補充療法(HRT)を受けている方は、受けていない方より子宮体がんにかかりにくいという調査結果さえ出ています。
一方、乳がんの発がん性については、未だ結論が出ていない状況です。薬の投与の仕方や患者の状態によって、リスクは増減するといわれています。ただし、「リスクを増やす」という説を主張する研究結果でも短期間(五年以内)の服用ならば問題ないようです。
とはいえ不安が消えない場合は、治療を受ける前に主治医とよく相談してみてください。
出血があるのは薬が効いている証拠
発がん性以外の副作用として、もうひとつよく話題に上るのが出血です。プロゲステロンを飲むと、エストロゲンによって増殖した子宮内膜が剥がれ、それが血液と一緒に排出されて、月経のような出血が起こることがあるのです(月経に似ているだけで、閉経した方が再び月経が始まるわけではありません)。
「せっかく生理が終わったのにわずらわしい」「生活する上で不便」と敬遠されがちですが、この出血はエストロゲンが子宮内膜に充分作用している証拠であり、ホルモン補充療法(HRT)が正しく機能しているサインです。
やがて出血も止まりますので、よほどの大量出血でなければ心配はいりません。
しかし、あまりに出血が気になる場合は、薬の頻度や量を調節することで改善できます。医師に相談してみましょう。
ときに乳房痛があることも
ホルモン補充療法(HRT)の副作用として、出血以外には「乳房が張って困る」「乳房が痛い」といった乳房痛を訴える方もいます。これは、エストロゲンの影響を受けやすい乳腺が、補充されたエストロゲンに微妙に反応して起こるもので、ホルモン補充療法(HRT)の効き目の現われでもあります。こちらもエストロゲン剤の服用量と関係があるので、乳房痛がひどい場合は主治医に相談し、薬の量を減らして経過を見てみましょう。また、しこりがある場合には主治医に専門医(乳腺外科、外科)を紹介してもらってください。乳がん検査が必要です。
イライラがひどくなった?
更年期障害でイライラしていた方が、「ホルモン補充療法(HRT)を受けてから、さらにイライラするようになった」と体感するケースがあります。
それはホルモン補充療法(HRT)のプロゲステロンによる副作用かもしれません。プロゲステロンは中枢神経に作用し、イライラや頭痛、うつ状態を引き起こすことがあるのです。
しかし、精神症状は単なる一過性のものであったり、または日常生活での他のストレスが要因である可能性もあります。とはいえ、どうしてもつらいときは薬の量を調節したり、ときにはプロゲステロンをやめてエストロゲンの単独投与法に、あるいは漢方治療に切り替えることもできます。遠慮なく主治医に相談してみましょう。
治療中は定期的に身体のチェックを!
ホルモン補充療法(HRT)で使用する薬は、いうまでもなくホルモンの製剤です。ホルモン製剤は、ごく微量でも身体にさまざまな影響を与えますので、その使用にはことのほか慎重さが求められます。
特に更年期障害の治療については、ホルモン製剤を連日、それも多くの場合、五年、十年とかなり長期にわたって飲み続けることになります。その間、定期的に血液検査などを行なって、その効き目や副作用がないかなどを確認しながら治療を続けていくことが重要です。ホルモン補充療法(HRT)を始めたら、とくに異常がなく経過していても出来れば三か月に一度、少なくとも半年に一度は採血してコレステロール値や肝機能、腎機能をチェックしてください。また、女性ホルモンの影響を受けやすい子宮体がん、乳がんについては半年~一年に一度、必ず検診を行なうようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
ホルモン補充療法(HRT)についてご紹介しました。
更年期障害は人によっては、日常生活に支障を来たすほど重い症状が出る方もいらっしゃいます。その場合、ホルモン補充療法(HRT)は画期的な治療法になる可能性があります。更年期障害を治すだけでなく、閉経後の生活の質(QQL=クオリティ・オブ・ライフ)の向上を目的とした「予防医療」の効果も期待できるのです。ホルモン補充療法(HRT)は決して怖い治療法ではありません。医師と相談しながら、ご自分にベストな治療を選んでいきましょう。